集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第12夜「ミラを見よう」(2011年9月16日号)



 私がみなさんにぜひお伝えしたいことの一つに、「星空は生きています」というのがあります。いえいえ、むしろ逆の話でして、人が星空と共に生きているのです。宇宙は一体なのです。その中で植物も動物ももちろん人間も生きているのです。私は変光星を調べていますが、観測するたびにそれを感じています。

 観測している星はペルセウス座のアルゴル、ぎょしゃ座のアルマーズ、そしてくじら座のミラ。そのミラが今月明るくなっています。実はこの星、およそ11ヶ月(332日:ただし年によって数週間ずれることがあります)ごとに明るくなったり暗くなったりしています。今年は今月15日に極大が予想されていました。

 星自体が伸び縮みして、一番縮んだ頃に高温になるため明るくなり、一番伸びきったあたりで低温になって暗くなります。変光が発見されたのは約400年前ですが、当時は、その理由がわからず、名前の通りミラクル(ラテン語のミラは“神秘な”という意味の言葉)な星でした。変光の理由が科学的に分かったのは、やっと100年くらい前のことです。表面の視線速度の変化が観測できるようになり、これにスペクトル観測による表面温度のデータと明るさの変化のデータを併せれば、変光のメカニズムを理解することが可能になったのです。

 暗いときは、望遠鏡でやっと見えるほどの9等くらいですが、明るくなると3~4等、年によっては2等になることがあります。かつては、何度か1等星になったこともあり、このため、私は「キリスト誕生の時に三人の博士(たぶん占星術の先生)を、バビロニア(現在のイラク)あたりからベトレヘムの馬小屋まで導いたと聖書に記載された星だ」と唱えました。最近アメリカでも、この説を唱えている人がいます。

 ともかく、肉眼で今年も明るく見えているはずです。極大後は徐々に暗くなっていきますので、たぶん10月末くらいまでは肉眼でも観測が可能です。ちなみに昨年は10月14日頃が極大で2.6等でした。その50日後でも、まだ3.5等でした。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。