集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第188夜「望遠鏡で木星を見よう」(2015年1月30日号)



 与謝蕪村という江戸時代の俳人の名前は、みなさんよくご存じでしょう。私も高校時代から親しませていただいています。中でも、「月天心 貧しき街を 通りけり」という句にはいつも感動しています。月天心は、冬の天頂付近に来る満月を表現しています。

 まさしくその情景が来週水曜2月4日の満月下で、特に深夜に味わえますよ。ただし、東京のような昼と夜との区別が付きにくい光溢れる街中ではダメで、少なくとも郊外でないといけませんね。

 でも、当夜の満月にはお供がいます。月のすぐ東側にいる木星です。しかも当夜の木星は、地球に最も近くなる衝時期なので、マイナス2.6等と普段よりずっと明るくなっています。明るくなっているのは、地球が接近して大きく見えるからで、小望遠鏡で見てもびっくりするほど良く見えます。

 木星は、土星同様、アマチュア天文道の登竜門です。ガリレオが発見したことで有名な4大衛星の動きや、表面にある台風のようなものとして知られる大赤斑から判る木星の自転など、様々な観測対象がありますが、なんと言ってもアマチュアが扱える小望遠鏡でも大きく見えることが最大の魅力です。もちろん私も、木星と土星と月のクレーターから遙かなる天文道に入門しました。

 ともかく、だまされたと思って、望遠鏡で大きな木星をご覧ください。すると、視野の中に広がる木星の色とりどりで複雑な表面模様に、みなさんは必ずや感動なさって、時間の流れを忘れるかも知れません。

 でも、15分も見ていると、きっと木星の自転にも気づかれることでしょう。そのうちに大赤斑が縁に隠れ、白斑など別の模様が見えてきて、うまくすると衛星が手前に来て、もっとうまくすると衛星の影も木星表面に映り、あぁ、あそこに行けば日食が見えるだろうな、と思ってしまう…そんなことになるはずです。小望遠鏡でも天文道の醍醐味を十二分に味わうことが出来ますよ。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。