集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第21夜「星座を創りましょう」(2011年11月18日号)



 今週末は、西(右)側が欠けて東(左)側が光っている下弦前後の月が夜が更けたころ昇ってきます。なので、月明かりに邪魔されず、満点…じゃなかった満天の星空に浸れるのは、日没1時間半後から午後11時くらいまでです。北東から南西の地平線まで、天の川がとうとうと流れているのが見えるはずですが、都会では街明かりが強くてだめでしょう。星空が美しい場所をうらやましく思うのは、都会に住む星好きに共通した感覚です。

 いうまでもないことですが、月明かりがない夜は、たくさんの暗い星たちを眺める絶好のチャンスです。そして、星座作りを楽しむチャンスでもあります。古代の人々が、どうしてあれほど多数の星座を創ったのか? 考えてみると、おもしろいですよ。

 だって、白鳥が飛来しない地域では、はくちょう座が考えられるはずはありませんし、勇者オリオンが逆立ちする南半球では、人ではなく、ワニやウミガメが当てはめられました。星座はその意味で、本来ローカルなものなのですね。

 今の季節、天高く馬肥ゆる秋、日本では天頂近くに天馬ペガススがいます。東北や北海道では、真上よりやや南側を逆立ちした姿勢で通過します。ただし歳差という現象が原因で、西暦7000年頃には天頂より北側を立った姿勢で通過するはずです。でも、どうして翼を持つ馬と考えたのでしょうか。それもお尻がない馬ですよ。

 それより、座布団に見立てるのなんてどうですか。ペガススの胴体と、アンドロメダ姫の頭(ペガススのおへそでもある)で作られる秋の大四辺形(アメリカではペガススの台形と呼ばれる)を、秋から冬の寒い季節に観測することが多い私は、必要に迫られて座布団座を創ったのです。日本に伝わる名まえでは、静岡県にヨツマボシ(四隅星?)というのもあります。 

 また、ギリシャでは、四角の中にほとんど星が見あたらないので、天国の窓とも呼んでいます。無粋な秋の大四辺形より、よほどロマンチックな見方ですね。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。