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あつぼし見上げて夜話

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第235夜「オーロラ」(2015年12月25日号)



 今晩25日は満月ですので、一晩中月明かりがもの凄く、特に冬の満月はふたご座の足下にいて、南中時の高度が高く、与謝野蕪村の俳句「月天心 貧しき町を 通りけり」に詠まれたままの状景です。なので、2等の北極星を見ることは困難ですね。

 でも、オリオン座の白い輝星リゲルとぎょしゃ座のオレンジ色の輝星カペラを結び、カペラからリゲルとは真反対側にその4/5程の距離に、北極星があるはずですから、何とかみつけてください。その鉛直下方が真北です。

 実は、今から57年前太陽活動が活発だった1958年2月11日の19~22時頃までの間に、北海道から山口県までの日本各地でオーロラが見えました。私が住んでいる東京八王子市でも見えたという貴重な記録があります。あいにく当時住んでいた東京神田では見ることができませんでしたが・・・。

 低緯度オーロラは我が国で赤気(しゃっく)と呼ばれたように赤く見えます。普段のオーロラカーテン最上部が高度500km程度で光るのに対し、このようなときは1000km以上に達すると言われ、超高層大気がオーロラの発電により加熱され、酸素原子が赤色光を発して、それが日本など低緯度から見えるため、赤く見えるのです。

 太陽表面でフレアという現象が生じると、そこから噴出する太陽風が地球付近を吹き抜ける際に、地球磁場と衝突して1億メガワットにも達する強力な電力が発生します。それによって放電が発生し、地球の磁極の周りに半径2000km以上になるオーロラリングが作られますが、特に凄い場合は、その南端が日本付近に達することがあると言われ、例えば平安時代には京都で、100年間に十数回も観察されたと言われ、良く山火事と見間違えられたそうです。

 あいにく今世紀は太陽活動が低下し始めており、低緯度オーロラも発生しにくくなりそうですが、どうでしょうか?気象学者が最近よく言う地球温暖化は、太陽活動が無視されがちです。でも、地球周囲の環境を論じることも重要なのではないでしょうか。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。