集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第237夜「羽子板星」(2016年1月8日号)



 松もとれて、お正月気分もだいぶ薄れましたが、じつは旧暦で言えばまだ年は明けていません。旧暦での元旦(正月一日)は、今年は来月8日です。

 その日は新月ですが、旧暦(正しくは天保暦)では、二月に必ず春分(今年は3月20日)が含まれると定義されており、そのため元旦は今年2月8日になります。

 なので今晩のお話は、本当は1か月先にすべきですが、でも羽子板と言えばお正月がふさわしいので、今申し上げることにしました。

 ところでみなさん、最近羽子板で遊んだことありますか? バドミントンやピンポンならあるけど、と言う人が多いのではないでしょうか。でも、旧暦を使っていた江戸時代の人たちなら、やっぱり羽子板ですね。

 だから、夜空に羽子板星があるのです。ちょうど今頃の21時くらい、ほとんど頭の真上にありますよ。ちょっと目がよい人なら7個8個見えるというすばる(プレアデス星団:おうし座の散開星団)ですね。その昔は誰にでも7個見えたそうですが、江戸時代あたりから数が減り、6個になったため、日本では六個連なる星と書いて六連星(むつらぼし)と呼ばれるようになったそうです。

 何故星が減ったのか、おそらくプレイオネーというギリシャ名が付いたシェルスター(貝殻星と訳される)が、ガスを多量に吹き出し、周りに殻を形成させたのでは・・・と言われています。言ってみれば忍者がよく使う水遁(すいとん)の術の目眩ましですよ。

 どうです、とりあえず今晩、羽子板星の中に何個星が見えるか、数えてみませんか。夜空の羽子板で遊んでみるのはいかがですか。幸い、今晩は月明かりがないので、絶好のチャンスですね。

 誰が考えたのか判りませんが、ちょっと小さいけれど、羽子板星という日本式星座名は、私は傑作だと思います! みなさんもぜひ、マイ星座を考案してみませんか。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。