集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第240夜「ダークマター」(2016年1月29日号)



 29日の晩は、みなさんお住まいの場所によって多少異なりますが、22時頃に下弦前の月が東空に上ります。それからは少々月明かりが邪魔になりますので、一等星が多い冬の夜空でも、なるべく日没1時間半~4時間後迄にお楽しみください。ダークな夜空を見ることができるはずです。

 ただ本当にダークなのは、20時半頃までです。その後は東空に木星が上ってくるからです。木星は、恒星として最も明るいおおいぬ座のシリウスより約1等明るく輝いています。夜中の頃は、すぐ東に月が輝いているので、それほど明るさは感じないでしょうが、それでも夜中の明星と呼ばれるのにふさわしい明るさでしょう。宵の明星(現在は明けの明星)の金星がいないので、少なくとも冬の一等星達をしのいで、堂々最輝星です。ただし、一番星はシリウスです。宵空には木星が上っていないので・・・。

 ところでダークと言えば、現在天文学者最大の話題で研究対象と言えば、ダークマターやダークエネルギーでしょう。前者は少しずつその正体が暴かれてきていますが、後者はまるで忍者のようにいることは判っていますが、いや、いないとおかしいと言った方が適切でしょうが、正体がまるで判っていません。

 ダークマターは幾らか判ってきたと言えますが、重力にのみ影響を受けますが、それ以外とはなんら影響を及ぼすことなく、我関せずです。他の天体と衝突しても、重力は及ぼし、位置の変動や回転に影響を及ぼしますが、いわゆる化学的変動、例えば光を出させるなどのことがないという、実に変なものなのです。

 だから、銀河系の回転などには影響が出ます。ところが、それ自身は姿を隠してスリ抜けるという、言わば忍者みたいな存在なのです。

 忍者はいても一人か二人でしょうが、実は私たちが見ることができる物質の十倍以上存在するというのが厄介なところです。言わば私たちは圧倒的な人数の忍者で取り囲まれていると言うべき所でしょうか。あぁ!

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。