集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第81夜「オリオン大星雲」(2013年1月11日号)



 オリオン座は、誰にもすぐ判る特徴のある形をしています。それぞれ2個の1等星と2等星とが長細い四角を作り、その真ん中に3個の2等星が一直線に並んで、いわゆる三つ星を作っているので、目立ちますね。

 おまけに三つ星のことをトライスター、オリオンの正式な英語の発音はオライオンといえば、疑獄事件として一時新聞紙上を賑わしたことは、ある年齢以上の人なら誰でも知っていることです。

 おまけに、その三つ星のすぐ南に小三つ星があって、その真ん中は霧みたいにぼやっとしていると来れば、まさに「黒い霧」。良くできたものでした。

 閑話休題。もちろんそれが今日の主題のオリオン大星雲です。明治時代にはオリオン大星霧と呼ばれていました。はるか昔には、これを、夜に川の字形に揃って寝ていた三人のこどもの内の誰かが漏らした「おねしょ」だと言われていました。

 朝、それを見つけたお母さんが怒って、共同責任で担いでお天道様に向かって干している四角い布団なのだそうです。そして、オリオン座のことを「おねしょの神様」と呼んでいます。

 筆者は、冬空にオリオン座を見ると、必ずこの話を思い出して、ニヤニヤします。そして、実に良くできた日本式星座話だと感じ入るのです。おまけに毎年6月には、そのお天道様がおねしょの神様のすぐ北側を通りかかり、布団をしっかり消毒してくれます。

 ですが、8月の早朝に東の空に上ってくるそれを見ると、がっかりします。まだおねしょの跡がしっかり残っているからです。

 今頃は、毎晩月明かりが無く、おねしょ痕をじっくり眺める絶好のチャンスです。広視野の双眼鏡は、それを眺める絶好の機材ですから、誰が付けたかはともかく、昔の人たちがユーモラスに呼んだ名前を、みなさんも愉しんでみませんか。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。