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あつぼし見上げて夜話

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第194夜「おとめ座超銀河団」(2015年3月13日号)



 夜更けて午前1時を回る頃、天頂東側にうしかい座の輝星アルクトウルスが、オレンジ色に輝いています。北に位置する北斗七星とはほぼ反対側に、白い1等星おとめ座のスピカがあります。天頂より西側にしし座のデネボラが見えていますか? 2等星なのでやっとかも知れません。よくそのはるか西側の白い1等星レグルスと間違えられます。

 スピカとアルクトウルスとデネボラを結ぶと、ほぼ正三角の春の大三角(デネボラの代わりにレグルスと結ぶと、長い二等辺三角)になります。デネボラからアルクトウルスに向かって1/3ほど行ったところに、相当大きな望遠鏡で月明かりもない暗い夜でないと見えないのですが、銀河系とは別の銀河のM87(別名おとめ座A)があります。この銀河が今回の主役です。といって、ことさらニックネームもない一見どうと言うことのない銀河なのですが、本格的な観測者の間では「活動楕円銀河」と言われ、中心部分からガスジェットが猛烈な勢いで吹き出している凄い天体です。

 でもその話題も別の機会に譲るとして、今回は私たちの住所の話です。少なくとも私の住所は、宇宙内/おとめ座超銀河団/局部銀河群/銀河系/オリオン腕内側/太陽系/ハビタブルゾーン/地球/アジア極東圏/日本国/東京都(これ以上面倒なので省略)です。
M87(地球から5480万光年)は、おとめ座超銀河団、そしておとめ座銀河団のドンです。銀河系や更に巨大なアンドロメダ大銀河を上回る重さを持つ大物なのです。ただしおとめ座超銀河団(直径1~2億光年、銀河数数千)自体は、80個ほどこの宇宙にある超銀河団の中では、小さめだそうです。

 銀河系がある局部銀河群は、現在このおとめ座超銀河団の強い重力に引かれて驀進中だそうで、その衝撃波面から、地球の気候に重大な影響を与える強い宇宙線が発生する可能性が将来あります。と言うわけでみなさん、ご自分の宇宙内での居場所について認識することが大事なことは、お解り戴けたでしょうか。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。