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あつぼし見上げて夜話

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第105夜「太陽がおかしい?」(2013年6月28日号)



 梅雨も中盤を過ぎ、例年ならば雨量が多くなり始める時期です。今年は、前半が空梅雨気味でしたが、ここにきて前線の活動が活発になっていますね。いずれにしても、夜空がすっきり晴れる見込みは、ほとんど立たない状況です。そんなときは太陽について考えましょう。

 世界中の天文学者が知っていることですが、今、太陽活動が変です。「太陽の冬眠」という言葉をご存じですか?「熊の冬眠」なら知っているけれど、それは冬だけの話ですね。どうも2005年から2010年まで、足かけ6年間、太陽が冬眠していたらしいのです。

 太陽活動は11年ごとに活発になることを皆さんはご存じでしょう。すると半分以上眠っていた、あるいはうたた寝していたというのは、どう考えても異常なことです。2008年8月には、太陽活動のバロメーターである黒点がタダの一つもなかったし、翌9月にはアフリカのケニア中部全域で、雹が降ったそうです。翌2009年は、日本で例を見ないほどの冷夏でした。2008~9年の長期無黒点期継続は100年ぶりのことだそうです。ほとんどの皆さんは、経験なさっていないはずです。

 しかもそれだけでなく、ようやく目覚めた2011年以降もそれほどしゃんとせず、日暮れ時を迎えそうで、今年の活動は前回の半分以下になるようです。これまでにも、黒点が長期間極めて少なかった時期は、この1000年間で5回知られています。有名なものが1645~1715年の「マウンダー極小期」で、1677年には、ロンドンを流れるテームズ川が凍結している様子が、ホンディウスという有名画家の作品に描かれています。

 この時期、ほとんどの天文学者が太陽黒点を知らなかったそうです。イギリスは農業が不振となり、その結果として、工業を中心とする産業革命が起こったとも言われ、国外に利権を求めたとも言われています。今後、太陽の冬眠が深く長引くようなことにでもなれば、もしかして、世界の歴史が変わってしまうかも知れません。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。