集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第102夜「そこにいなくて良かった!」(2013年6月7日号)



 私たちは、宇宙飛行士の皆さんを除いて、みんなこの地球上で生きています。国際宇宙ステーションで活躍している飛行士たちが、そこから地球を見て何を感じるか、それは今ではたくさんの本で読むことができ、哲学や宗教心すら生まれてくると言います。

 ところでそれは、太陽系がここにあるからです。もし、先週お話した銀河中心に太陽系があったなら、こうはいきませんでした。そこは、巨大ブラックホールやら激しい星の爆発やらで、すさまじい状況になっているからです。

 とくにこの時季、よく晴れてさんさんと太陽の光が降り注ぐと、合わせて強い紫外線も降ってきます。だから、最近、女性のみなさんは、雨が降っていなくても黒い傘をさしていますね。ところが、銀河中心ではそんなもんじゃ、とても、とても…の世界。紫外線やガンマ線など有害な高エネルギーの電磁波そのほかであふれかえっているわけです。

 つまり銀河中心では、そこに地球型惑星がハビタブルゾーン内にあったとしても、とても生命が発生できそうにありません。太陽系が銀河系の田舎にあったからこそ、いま私たちは生きていられるのです。その意味で神様に感謝、感謝。
生命の発生条件、それは天文学者や生物学者たちが現在一生懸命研究しているものですが、まだまだわからないことだらけです。しかし、はっきり言えることは、地球上で生命が脅かされるような環境の下では、少なくとも、みなさんもよくご存知の生き物たちは生まれてこなかったハズ。

 私は宇宙を考えることは、生命について考えることだとも思っています。つまり生命とは何か、また生命を全うすることとは何か、戦争も含め、命を奪う行為が何故いけないか。そんなことを、宇宙を通していつも私は考えています。だから、私は毎晩星を見続けているのかもしれません。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。