集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第119夜「ニュー・スター」(2013年10月4日号)



 5日朝に月は朔(新月のこと)になります。なので、この日前後数日は月明かりに邪魔されず、秋の物静かな暗い夜が過ごせるはずです。ですが・・・、 もしそこに見慣れない星が登場していたら、私などは静かに過ごせなくなります。そうです、新星です。芸能界に新星(スター)あらわると良く言われますが、天文界でも新星(ノバ)とか、甚だしい場合は超新星(スーパーノバ)出現と言われます。

 私にとってのその最初の出現は、1967年の夏のことでした。国立天文台のある先生からその情報を戴き、すわ一大事!とすぐに望遠鏡を向けたのが、夏から冬にかけてよく見ることができる、いるか座の方向でした。

 実際は肉眼でも見えるほど明るかったので、望遠鏡はいらず、急遽双眼鏡での観測となりましたが、それまで新星というものはすぐに暗くなると教えられていましたので、もう大あわてと言った状況でした。

 いるか座新星1967(後にいるか座HR)と呼ばれたその星は、私にとって第一号の新星との初対面だっただけでなく、いつまで経っても暗くならないばかりか、逆に明るくなっていくという誠に不思議なニュー・スターでした。5か月も経ってから明るさがピークになったのです。いやはや、実にくたびれた初対面となりました。

 新星はつい数十年前まで、星がガスの中に突っ込むためにガスが光度を増すと考えられていましたが、今では否定され、幾つかの理由で星表面に起きる爆発であるとされています。

 星全体が吹っ飛んでしまうと、超新星爆発と言われ、銀河系内では400年くらいに一度出現すると言われます。1604年10月にへびつかい座に出現し、木星より明るくなったというケプラーの超新星以来、銀河系内には出現していないので、もうすぐとんでもない超新星が現れるかもしれないですね。この点、新星は、もっと頻繁に現れて、数年に一度です。

 そして、この夏、あの思い出のいるか座に、ふたたび現れた新星(V339 Del)を見上げながら、半世紀前の懐かしい星空を思い出したのでした。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。