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あつぼし見上げて夜話

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第126夜「天高く馬肥ゆる秋」(2013年11月22日号)



 今月22日は二十四節気で小雪という日です。「しょうせつ」と読みますが、もちろん小説の誤りではなく、来月7日の大雪(これも「おおゆき」ではなく「たいせつ」と読む)を前にして、冬が始まっていますよ、という季節用語なのです。いつから冬になったかというと、昔の日本(と中国)では、今月7日の立冬の日からで、立春前日の節分までが冬です。

 昔の・・・とお断りしたのは、みなさんおなじみの12月、1月、2月が冬というのが、米国進駐軍(ご存じないかも・・・)がもたらした米国式季節の決め方なのです。ヨーロッパではまた異なり、冬至から春分の前の日までが冬です。春分の日に太陽があった場所から225度離れた位置に太陽がやってくる日が立冬、240度の時が小雪、255度離れる時が大雪となります。

 ・・・で、今回の話題「天高く馬肥ゆる秋」は本来なら時期遅れですが、でも私が住む関東地方では、毎年今頃天高く好天が続きますので、米国式でお許しいただくこととして、空が澄み、天体観測用語ではシーイングが良いといい、観測日和にもなります。良い諺だと思っていたら、実はこれ本家中国ではトンデモナイ悪い話なのだそうです。

 すなわち、中国では秋になると、北方から越冬用の食糧を求めて攻め込んでくることが多かった騎馬民族の匈奴(きょうど)の襲撃に対する警句なのだそうです。そういえば、邪気がやってくる北東方向のことを、鬼門と言って、そちらの方向に万里の長城を建設したことは有名ですが、それはそもそも、モンゴルとかシベリアに住んでいた遊牧民達が中国の人にとっては脅威だったのでしょうね。

 天高く馬肥ゆる秋といって、のんびりしていてはいけませんよ、というわけでした。でも今の宇宙時代では、星空がきれいに見えるこういう季節こそ、天体を楽しんでみませんか、そういえば、今年最大の話題のアイソン彗星が、天低くではありますが、今後どんな姿を見せるのか。。。やっぱりのんびりはしていられませんよね。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。