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あつぼし見上げて夜話

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第124夜「ぼちぼちアイソン彗星観望の準備」(2013年11月8日号)



 もうあと一月足らずで世の中は大騒ぎになること請け合いです。そう、明け方の空はもちろんのこと、昼間の青空の中でも見えるかもしれないと言われている大彗星アイソンの登場です。

 International Scientific Optical Networkというロシアの組織が所有する望遠鏡で発見されたので、その名がつきました。昔のようにハレー彗星とか池谷・関彗星など人の名前ではないのですね。それらの彗星ほど本体は大きくないのに、なぜ大彗星と私が呼ぶかというと、太陽にチョー大接近するからです。その日は11月29日。太陽表面までたったの117万kmまで接近し、太陽にあぶられて、尾がビューッと伸びるからです。

 もしかすると、太陽に近づきすぎて、そのまま全体が蒸発してしまう恐れもあるそうですが、かつて80万kmまで近づいて生き延びたものもありましたから、とりあえず、そこは大丈夫と期待しておきましょう。なにしろ、この彗星は一度限りの太陽接近で、たぶん永久に戻ってはこないからです。かりに戻ってくる場合でも何十万年何百万年先の話ですから、とりあえず永久です。

 というワケで、この大彗星を見逃す手はありません。幸い11月末から12月初めは安定した天気が続く時期です。残念ながら見えるのが明け方の南東空で、しかも低空ですから、よく観察するためには双眼鏡が必要です。彗星がたいへん明るくなるようなら、日中青空の中で太陽の西側を眺めるのがよいかもしれません。昼間彗星が見えるというのは、そうザラにあることではありません。ただし、太陽の強烈な明かりで目を傷めないように、充分に注意しましょう。

 さて、そんな大彗星の代表格のハレー彗星が、今から百年ほど前に接近したときのこと。イスタンブールという街で、男の子がみんなスカートをはかされました。悪魔の象徴である彗星は、女の子には手を出さないと信じられていたからです。

 かつては、彗星に関わるさまざまな迷信がありました。尾を伸ばして日に日に位置を変えていく、そんな神秘的な彗星の姿を、ぜひ科学の眼で捉えなおして、観望を楽しんでいただければと思います。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。