集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第131夜「宵と夜中の明星のバトンタッチ」(2013年12月27日号)



 今月初め、日没後の西南西の空、ひときわ明るく輝いていたのが金星でした。今でも日没1時間後ほどまでは見えています。つまりまだ「宵の明星」と言って良い状況です。

 でも、もう一つ同時に明るい星が東南東の空に見えるようになりました。金星ほどの明るさではありませんが、恒星で最も明るいシリウスよりははるかに明るく輝いています。それこそが「夜中の明星」と言われる木星です。

 英語表現にイーブニング・スターがあり、これを「宵の明星」と訳す方がおられますが、正確に言うと誤りです。同様にモーニング・スターを「明けの明星」と訳すのも誤りです。前の表現は、夕方見える明るい星全部を指し、後のものは明け方見えるものを全て表現しているからです。

 だから、今頃宵の東空で見え始め、明け方の西空で消えていく木星は、イーブニング・スターでもありモーニング・スターでもあることになります。もちろん、真夜中の南空に堂々と見えているので、「夜中の明星」は正解です。特に来月4日に地球が最も近づくので、木星はこの時期に最も明るく見え、シリウスより1等級以上も明るく輝いています。

 ちょうど真夜中の空高くに木星が、そしてそのほぼ真南にシリウスが見えるので見比べてみてください。木星が、古代ギリシャでトップクラスの星「ジュピター」と崇められた理由がおわかりになるでしょう。

 宵の明星の金星は、1月初めに宵空から消え去り、従って宵の明星ではなくなってしまいますが、早くも1月下旬には明けの明星として輝き始めます。その変身の様子は、全くめまぐるしいものです。

 ところで、古代の人々は、それが同じ惑星だとは知らなかったそうです。現代の地動説に慣れた我々から見れば、不思議な感じを覚えますが、昔の人々にしてみれば、同じと見る方が不自然だったのでしょうね。それを同じものと証明した最初の人が、皆さんが中学生の時に勉強した、あの数学者ピタゴラスさんだそうです。やっぱり偉い!

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。