集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第134夜「ボイジャー1号大記録達成!」(2014年1月17日号)



 16日は満月でしたが、月のそばに月明に負けずに頑張って輝いていました。一番接近した15日でもなんとか見えていました。木星のことです。17日以降日ごとに月は暗くなり、木星から離れていくので、邪魔しなくなり、木星が天下をとります。南の空に輝く輝星おおいぬ座のシリウスも、木星にはタジタジですね。

 ところで去年の9月13日、大変嬉しいニュースが私たちに届きました。それは、1979年3月5日に木星まで2万7800kmに近づいて数々の業績を上げたボイジャー1号が、人類史上、人工物として初めて、太陽系の圏外に脱出したというものでした。ただし、脱出の正確な日付は、2012年8月25日だそうです。同機は今、へびつかい座の天域にいます。

 よく天文学的数字という代表に、光年という用語が出てきます。正確には9兆4605億2834万8000km程度ですが、覚えにくいので約9兆5000億km、もっとおおざっぱには10兆kmでも良いですが、途方もない距離ですね。それでも、1光年以内に私たちの太陽以外恒星はありませんから、やっぱり確かに天文学的数字です!

 シリウスは8.7光年、ベテルギウスが640光年ですから、それに比べれば、ボイジャー1号が到達した190億km(0.002光年)はいかにもわずかな数字です。それでも、人類の数百万年という歴史の中で、そこに初めて到達できたというのは、凄いことではないでしょうか。

 打上が1979年3月5日のことでしたから、1万2227日でそれだけ飛んだ(平均秒速18km)ことになります。2020年頃までまだ電池が持つそうですから、ボイジャー1号(と2号)が太陽系のすぐ外側の部分を調べた結果を、いずれ私たちは知ることができそうです。

 同衛星にはレコードが搭載されています。それには日本語のコンニチワと言うメッセージが録音されていますから、宇宙の彼方にいるかもしれない生命に、いつの日かには届くかも知れません。4万年後にきりん座のAC+79 3888という星から1.6光年のところを通過するそうです。楽しみですね。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。