集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第16夜「宇宙には“不思議”がいっぱい」(2011年10月14日号)



 秋もいよいよ深まってきました。日本中どこでも、これからは急速に夕方の訪れが早まり、夜が長くなってくるでしょう。なぜ秋が来て冬になり、春が訪れてやがて夏になるのでしょう? なんてお考えになったことがありますか。

 もちろん天文学的には日照時間や太陽の高さなどが関係します、と簡単にいうことはできますが、ではどうして時間が過去から未来へ、一方向にしか流れないのかという問いには、誰にも簡単には答えられないでしょう。

 星空を見ていると、ふだん余り気づかないことが、妙に気になることがあります。たとえば、14日の夜に月が木星のそばにいますが、翌晩にはすばる(プレアデス星団)に接近し、更に翌晩16日にはおうし座の1等星アルデバランに近づきます。明らかに月が動いているのですね。

 ところが、もう40年近く前になりますが、その朝、下弦頃の月が見えていたある停留所で、バスを待っている子どもとお母さんの会話を聞いて驚いてしまった事がありました。子どもが「月ってたくさんあるの?」と聞いたところ、お母さんは「そうよ、三日月や半月や満月もあるのよ。それに夜に見える月も、朝に見える月もあって、月はたくさんあるの」。

 いえいえ、月は1個しかありません。地球の周りをそれが公転しているだけです。

 でも、なぜ月は1個しかないのでしょう。木星や土星にはそれぞれ60個以上もあるのに、ですよ。太陽系全体では、170個以上の衛星、すなわち月があります。ですが、水星や金星には1個もなく、同じ地球型岩石惑星の火星には、小さな衛星が2個あります。

 こういった一見簡単そうな疑問でも、実は研究すると、太陽系の成り立ちまで深入りしなければならないことになります。いかがですか? みなさんも星や夜空を眺めて、首をかしげてみませんか。こんな小さな頭で、これほど大きな(世界で一番大きな)宇宙のことを考えられる人間って、素晴らしいですよね。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。