集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第15夜「今年2回目のお月見と流星群」(2011年10月7日号)



 夕方がやってくる時刻が、いよいよ早まってきた今日この頃、如何お過ごしですか。東日本大震災の被災地では、冷え込む日もだんだん増えてきたのではないでしょうか。季節の変動でお体に負担がかからないよう、お気を付け下さい。

 星空は、夏の大三角に代わって秋の大四角(ペガススの台形)が天頂付近を飾るようになりました。私はこの□(四角)を、座布団座と呼んでいます。寒くなるこれからの観測に、どうしても座布団を借りたくなるからです。

 ですが、今週は座布団座が目立たなくなります。2等星ばかりだからではなく、月明かりが邪魔するからです。12日の水曜日が満月の夜です。その3日前の9日夜は、今年2回目のお月見、旧暦九月十三夜です。その晩の月は「後の月」と呼ばれ、江戸時代から先月12日の中秋の名月と併せて2回見なければいけないといわれました。

 これは、片方のお月見しか(しかもご夫婦いっしょに同じところで)見ないと「片月見」といわれ、「片付き身」に通じて半身不随になるとか、夫婦別れになるなどと信じられていたからでした。

 十三夜の月は、満月ではないので、まん丸ではありません。その情景が日本民族独特の「もののあはれ」観によって千年以上前に「観月」として定着したようです。

 日本で独自に編み出されたお月見は、そのほかにもいろいろあり、旧正月十五夜、あるいは旧十月十日夜(とおかんや)、二十三夜月などなど、じつに多彩です。みなさんお住まいの地域でも古くからの伝承があるかもしれません。

 そんな月を、少し科学してみましょう。五円玉をお持ちでしたら、指に挟んで腕を伸ばし、昇ってきた月が穴の中に収まるのを確かめて下さい。月って意外と小さいのです。

 そればかりでなく12日は、実は今年一番小さい満月です。それは、月の公転軌道が少し楕円で、この日、月が地球からもっとも離れるからです。その距離は、40万6356kmです。そして、今年一番近かったのは、3月20日の35万6616 kmでした。

 さて、今週はもうひとつ大きな話題が。8日夜から9日未明にかけて、「10月りゅう座流星群(ジャコビニ流星群)」が極大を迎えます。今年は、かなりの出現が予想されていますが、あいにく、2回目のお月見を控えた月明かりで、暗い流星は見えにくいでしょう。ですが、連休で天気も全国的によさそうなので、防寒に気をつけて明け方まで星空を眺めると、流れ星をたくさん見ることができるかもしれません。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。