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あつぼし見上げて夜話

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第169夜「お彼岸」(2014年9月19日号)



 今日は9月19日彼岸の入りです。仏教行事、と言っても日本独特の行事でインドや中国にはないそうですが、お彼岸は今年9月23日の秋分の日が中日(ちゅうにち:と言ってもドラゴンズのことではありません)で、この日を挟んで一週間がお彼岸です。従って明けは9月26日。ただし、若干注意が必要で、4年ごとに進み遅れが生じて、2012年から2043年までは1年目が22日、2~4年目までが23日が中日になるはずです。ただし、正式には国立天文台発表の暦によって下さい。

 ともかく秋の彼岸の中日=秋分で、春の彼岸の中日=春分です。この日は、ヨーロッパの季節区分(天文学的季節区分)で秋の始まりです。なお、日本の古い季節区分では、8月7日頃の立秋から11月7日の立冬の前日(すなわち6日)までが秋ですし、米国では9~11月が秋です。日本ではこのため、お彼岸の中日に一番近い満月頃が中秋の名月(旧暦八月十五夜月)とされました。

 来週水曜(24日)には新月になるので、今は宵空に月もなく、絶好の星空観望ができますね。天頂近くに位置するはくちょう座のデネブとそのやや西にあること座のベガ、南にあるわし座のアルタイルの3個の一等星で完成する「夏の大三角」がよく見えています。本来ならその中に天の川が流れているはずです。 

 でも、日本で今は秋なので、なぜ「夏の」なのでしょうか。これはそれがサマー・トライアングルと呼ばれることからお判りになるように、欧米の名称なのです。それに替わって、宵空南東の低空に見える白い一等星、みなみのうお座のフォーマルハウト(魚の口)は、日本の固有名で「秋の一つ星」という名前が付けられています。また、東の中天に見られる4個の二等星が作る四角形を、日本では「秋の大四角」と呼びますが、欧米ではペガススの台形といいます。

 このように、星座は季節感を伴うものですが、地域によって季節区分が異なることを如実に示してもいるのです。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。