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あつぼし見上げて夜話

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第172夜「パンスペルミアって何でしょう」(2014年10月10日号)



 8日宵空での皆既月食はいかがでした?今年日本で見ることができた最大の天文イベントでしたから、ご家族おそろいでご覧になった方も多かったことでしょう。私は月食ツアーの添乗員(ただし解説と指導のみ)で八ヶ岳まで行ってきました。翌9日には帰宅しましたが、りゅう座流星群の極大日でした。満月の翌日でしたから、月明かりで条件は最悪。でもとりあえず夜中に起きていました。

 ところで突然ですがみなさん、パンスペルミアってご存じですか。最新天文用語のニューフェースです。これって流れ星に関係する話なのですよ。流れ星は亡くなった人が天国に昇っていくしるし、というのは「マッチ売りの少女」に出てくるお話。

 このパンスペルミアは、もしかするとほうき星が地球にもたらす流れ星のチリによって、地球ばかりでなく、くまなく太陽系に生命の種(胚種という)がばらまかれているという、宇宙生物学上の最新学説なのです。ホイル(この方は既に亡くなられました)とウィックラマシンゲという学者が真面目に論じておられ、日本の有名な研究者・松井孝典先生の著書『スリランカの赤い雨』に詳しく書かれています。

 そのほか、アストバイオロジー、ゴルディロックス・プラネット、バイオマーカー、バイオチグネチャー、ハビタブル・ゾーンなどなど、10年以上前には想像すら出来なかったニューフェースたちがゴロゴロいるようになりました。

 最近私が読んだ『ミッション・トゥ・マーズ』(著者はアポロ11号で月に行ったオルドリン宇宙飛行士)という本には、外太陽系循環航路、火星入植者、航宙、戦略的宇宙事業連合、ハロー軌道、有人惑星間タクシー、惑星間通商なども書かれており、今やこういう時代になったのだということが、否が応でも認識させられてしまいました。

 昔は、火星人は火星から来た人という意味でしたが、もうすぐ火星に住んでいる地球人の子孫ということになるのでしょうね。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。