集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第174夜「新月です」(2014年10月24日号)



 今日は新月です。正確に申し上げると24日6時57分が朔(新月の学名)です。だから、今日の夕方17時過ぎに西南西の空低く糸のように細い月(古く日本では繊月あるいは眉月と言い、それらしい良い月名ですね。月の初生とも言いました)が見えるかも知れません。でも、ぼやぼやしていると、18時ちょっと過ぎには沈んでしまいます。

 こういう細い月をじーっと見つめている人がいました。それがかつてのイスラム教神官たちでした。イスラム教では、というよりアラビア人たちは昔から太陰暦、すなわち月の満ち欠けを基にした暦を使っていました。毎月の月初めに月が初めて西空に見えた日を基に、それから逆算して新月の日、すなわち一日を決定したのです。

 太陰太陽暦を使っていた日本でも、一日はとても大切な日でした。なので「ついたち」なのです。「月立つ」から来ました。ついでに二日(ふつか)三日(みっか)四日(よっか)は、ヒイ(ありません)、フウ、ミイ、ヨウの数え方から来ます。「カ」は元来「日」のことで、カヨミ(日読み)がコヨミ(暦)になったと言う説があります。

 元に戻って、イスラムの神官は、月が初めて見えた日に大声で「月が見えたぞ!」と叫び(カレンダエ)ました。暦のカレンダーはこれから来たそうです。一日が大切(特に金貸しにとっては決済日と関係しました)だったからですね。

 太陽と合になる朔の瞬間、普通は月を見ることができません。しかしこの日北米大陸にいる人にとっては見えます。部分日食となるからで、やや姑息な手段ですが、太陽が欠けた部分として新月を見ることができるのです。

 でも皆さんにとっては、この日が一晩中天の川を見ることができるかも知れない日ですから、貴重な日ですね。暗い条件の良い空で宵空なら、北東の地平線から天頂よりやや北を通って南西の地平線まで流れています。乳の道らしく淡白に見えますよ。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。