集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第228夜「地球接近天体」(2015年11月6日号)



 狼が来たぞ!少年の話はとても有名です。もちろんそんなことは起こって貰いたくありません。また、中国の杞という國に、昔「空が墜ちてきたらどうしよう」と憂いた人がいて、そこから杞憂という言葉が生まれたことも有名ですが、世の中にはたくさんの心配があります。本当はここでは申し上げたくないのですが、でも原子力発電所の再稼働を一部では推進したい人がいる現在、敢えて申し上げることにしました。それは、小惑星(特にNEOニア・アース・オブジェクト)の地球衝突です。

 今から6550万年前、ユカタン半島に直径100kmの小惑星が衝突したことが恐竜の絶滅につながったということは、今は科学的事実です。国際的な組織として、衝突する可能性がある天体を捜索する組織も活動していることも事実です。なぜ関係者がそれに目をつぶるのでしょう。原発に小惑星が隕石として衝突することもあるのです。

 現在、衝突の恐れがある小惑星中直径100m以上のNEOは、4700個以上あるとされています。100mの小惑星では大絶滅は起きませんが、大都市や小国程度なら破壊され、海への落下なら大津波を発生させるそうです。直径1km以上で予想軌道が地球から740万2982.4km以内が判断条件と言います。新たなNEOを生み出す起源領域が、小惑星帯内にあるらしいと推測がされています。

 直径200mの石質小惑星に、5トンの衝突体を秒速10kmで激突させると、小惑星の速度を秒速1cm以上変化させることができます。この僅かな変化で小惑星の軌道上の位置を、10年間で地球半径二個分以上変化させることができるそうです。というわけで今では NEOの軌道を逸らす具体的な方法として、①その表面物質を蒸発させ軽くさせ、②小惑星・大型人工衛星を一時的に接近させ、その重力で、③衝突まで時間がない場合は、岩をぶつけてなどがあります。確率がきわめて小さくても、それがゼロでない限り現実に起きうるということ。わたしたちは、その事実につねに謙虚でなければならないと思うのです。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。