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あつぼし見上げて夜話

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第230夜「銀河系の中心」(2015年11月20日号)



 今から87年前の1928年11月20日、シャプレーという米国の天文学者が、米国科学アカデミーの秋季総会で、宇宙の中心(現在で言う銀河中心)は、太陽から約4万7000光年で、中心の厚さが1万6000光年だと発表しました。

 現在、太陽から銀河中心までの距離は、約2万8000光年と考えられており、中心の厚さ(バルジと呼ばれる)は、測定者によってバラバラですが、いずれにしてもシャプレーの結論は、太陽が銀河中心にないということで、画期的なものでした。
つまり当時までは、太陽系が銀河系の中心に位置していると誰もが思っていたからでした。また、銀河系に果てがあるという結論も衝撃的なことでした。

 その後アンドロメダ大銀河が、銀河系の外にあることも判り、しかも銀河系よりはるかに星の数が多い集団であることも確認されて、むしろ銀河系は宇宙では小物だということも判ってきました。

 そればかりではありません。今から数十億年後には、銀河系がアンドロメダ大銀河に衝突合体される、すなわち今も前者は後者に引っ張られ続け、接近中でやがてミルカミーダという大銀河になることも判っています。前にもお話しましたが、ミルカミーダはミルキーウェイ(天の川)とアンドロミーダ(アンドロメダ大銀河)との合成語です。

 あいにく、ここ暫くは月が明るいので見るのが困難ですが、銀河系中心があるいて座は夕方18時頃南西空低くに、アンドロメダ大銀河は頭上高くに位置しています。見えても見えなくても、少なくとも私たちが宇宙の中心にいるのではないことに、どうぞ思いをはせてください。そして人間は宇宙の中心的存在でもないことにも、思いをどうぞ!

 ただし、私たちが見える姿は全て過去のものです。アンドロメダ大銀河の姿は、230万年前にそこを出発した光です。そして科学的に推測される未来が見えてくるのです。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。