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あつぼし見上げて夜話

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第25夜「夕焼け鑑賞」(2011年12月16日号)



 夕方の訪れが、とても早い季節になりました。みなさんご存じでしたか? 日没が一番早かったのは10日くらい前だったということを。実は「日没が一番早いのは冬至の日だ」と思い違いしている人がほとんどです。さらに日の出が一番遅い日も冬至ではありません。江戸時代から、冬至後10日もすれば誰でも夕方が遅くなったことに気づくと言われてきました。

 冬至の日は、確かに昼間が一番短い日ですが、日没がもっとも早いわけではなく、日の出がもっとも遅いわけでもありません。その理由は、みなさんでよーく科学的に考えていただくことにして、今回は夕焼けに注目したいと思います。

 夕焼けは天文現象ではなく、地球の大気現象ですから、気象学の対象(大気光象という)ですが、昼と夜の境界に広がる見事な色彩グラデーションの中で星が瞬き出す、あの美しい情景は天文好きにとっても馴染みの深いものです。そこで、夕焼けについて調べてみましょう。とくに太平洋側で強い冬型になる今の季節は、夕焼けがとても綺麗です。

 夕焼けを英語で何というか、ご存じですか? 実は「夕焼け」のような一語で言える簡単な言葉がなく、調べてみると“an evening glow ”とか“an afterglow” とか“a sunset colors”など、味も素っ気もない表現しか辞書では見あたりません。要するに、英語国では夕焼けについてさほど意識されていないということでしょうか。

 日本には良い唱歌があります。夕焼け小焼けで日が暮れて、山のお寺の鐘が鳴る・・・。実はこの歌が作られた東京の八王子市に私は住んでいます。だからというわけではありませんが、私は夕焼けに思い入れを持っています。なので、夕方、日没とは反対の方向に、反対夕焼け“counter afterglow”というものを何度も目撃し、写真も撮りました。

 日没のとき、太陽とは反対方向を見つめて喜んでいる人なんて、あまり近づきたくないと思われる方もいるかもしれませんが……(笑)。夕焼けよりはるかに見えにくいものですが、この反対夕焼けの発見の楽しみなども、夕焼け鑑賞の醍醐味のひとつです。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。