集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第27夜「冬の天の川」(2011年12月30日号)



 今年の大晦日(おおみそか)、除夜の鐘が鳴り終わり、元旦未明には神社に向かい始めるみなさんも、今年は例年以上に多いことでしょう。今年あった嫌なことや不幸なことに、心の中で一区切りつけて、未来を生きなければならない私たちにとって、これは、自然なことでしょう。

 そんな時、ふと頭の真上に目を向けてみませんか。そこにはいつも通り、とうとうと冬の天の川が流れているからです。いつも通りと申し上げましたが、再来年の2013年元旦はそうではありません。満月過ぎの月が南の空に煌々と照り輝くからです。2014年は再び月がいない元旦未明になり、冬の天の川の観望チャンスになります。

 ところで、天の川を「川」と見るのは、古代エジプトと古代アラビア、インド、中国、そして日本など中近東からアジアに広くみられた見方でした。そしてそれが、仏教の来世と現世を分けるあの三途の川につながるのだろうと考える人もいます。

 一方、欧米では魂の道、天使や英雄の道というふうに、一般に「道」と見られていました。現代英語で“Milky Way”、すなわち乳の道です。なぜ、乳の道なのかはお調べいただくとして、多くのアメリカのアポリジニ(いわゆるインディアン)もまた“道”と捉えていたようです。現代ではそれが世界的に広まり、エジプトでもアラビアでも、「川」という見方は廃れてきているそうです。

 魂の道は、元旦未明、北から立ち上がり、天頂(頭の真上)を通って南の地平線まで延びています。ほんとうに亡くなった人たちの霊魂が天国に昇っていくようですね。天国は上に、地獄は下にあるという考えは、世界共通です。うつむいてばかりではいけません。
人間は上を見て、良いものが上にあると考える唯一の動物だそうです。果実採集生活をしていた古代人の名残(なごり)だといわれますが、星がキレイだと誰もが思うのも、それに由来するそうです。とくに困難なときこそ、意識的に真上を見上げて、良いもの・美しいものを見、そして良いことを考えてみませんか。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。