集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第62夜「アルゴルをお楽しみ下さい」(2012年8月31日号)



 毎年8月と言えば、お盆休み頃のペルセウス座流星群の出現で、中学や高校の天文部のみなさんが大いに盛り上がるものです。確かに流星群の観測は、一人でやる方法では広範囲をまかなうことができないので、数人のグループでやることは意味があり、そのため部活動にはぴったりですね。

 それに較べて、変光星の肉眼観測はほぼ完璧に単独行です。他の人がこのくらいの明るさに見ていることを知ると、影響されるからです。だから、グループで観測する場合でも、見ている星はバラバラというのが普通です。でも、それでも全く困りません。観測対象がごまんと(大げさに言えば10万も100万も)あるからです。

 毎年8月(条件がよい年は7月)から翌年3月まで、私のライフワークである食変光星アルゴルの極小が観測できます。アルゴルは流星群と同じペルセウス座にあって、3日弱の周期で、2.1等から3.4等の範囲で明るさを変える星です。極小、すなわち一番暗くなるところを観測するチャンスは毎シーズン10回ほどで、ラッキーな年でも14回程度とそんなに多くはありません。

 ですが、みなさんもご一緒にいかがですか。9月3日午前2時46分頃と9月5日23時34分頃は、ともに3.4等で、最も暗くなっているはずです。その際、明るさばかりでなく、色もご注目下さい。異常なことが起こっていると、普段なら白いはずが黄色っぽく、あるいは橙色っぽく見えるかもしれないからです。そんな時は3.4等まで暗くならないかもしれません。私も以前、色が橙色っぽく、3.2等までしか暗くならなかったのを見たことがあります。

 実は、この星は、2004年8月頃から変なのです。今年2月現在で、変光の周期が2日20時間49分3.45秒(±0.04秒)と、1670年の変光発見以来、平均より6.54秒も長くなって、観測史上最長の変光周期になっているからです。食変光星は、主星と伴星のふたつの星がお互いの周りを回転しあい、その重なりによって見かけの明るさが変化する星です。ふたつの星の間でガスが移動したり、連星系の外へ物質が放出されたりして、変光の周期が変わることが知られていますが、今回のアルゴルの周期の延びはかなり異常です。今後いつまでこの状況が続くのか、私は楽しみです。

 ということで、流星群ばかりでなく、ペルセウス座の他の天体も、どうぞごひいきに。

※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。