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あつぼし見上げて夜話

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第65夜「南の一つ星、秋星」(2012年9月21日号)



 来週火曜の25日にヴェガとアルタイルを結ぶ線上にあった月は、日ごとに東へ進み、27日にはヴェガと、デネブ・アルタイルの中間点を結ぶ線上にやってきます。そのさらに左下(南東)に、夏の大三角を作る3個の1等星のどれよりも暗いフォーマルハウト(みなみのうお座の1等星)があります。

 日本では、一般には「フォーマルハウト」で通用していますが、正しい英語なら「フォーマロー」と発音するようです。でも、日本ではもっとポピュラーな名前があって、「南の一つ星」とか「秋星」というものが有名です。どちらの名前も、星の文人・野尻抱影先生の命名です。

 まさに秋を感じさせる星で、宵空に見える季節は秋だけです。南の空で余り高くならないからですね。これは、日本で楽に見ることのできる1等星の中では、一番南に位置するためです。それと比較すると、夏の大三角は見える期間が長く、宵空では夏から冬まで見えます。むしろ秋の大三角と言っても良いほどです。そんな名前はありませんが・・・。

 ところで、このフォーマルハウトは夏の大三角のヴェガまで約36光年、アルタイルからはわずか22光年しか離れていません。またケンタウルス座アルファと太陽まで共に25光年、シリウスが28光年、プロキオンが33光年と、その近辺には多数の明るい星があります。また、この星の運動を調べてみると、かつてヴェガとふたご座の2等星カストルと同一の星団を成していた運動をしていたらしいことが判ってきました。現在は今も近隣にある、インディアン座イプシロン星を含む7個の星と共通の運動をしています。

 その意味で、一つ星ではないようです。また、最近はこの星の周りに原始惑星円盤があって、そこに2億年以内に誕生したばかりの原始惑星が発見されたということも、議論されています。反対の意見もありますが・・・。

 秋の南の夜空にポツンと寂しげに輝くフォーマルハウトですが、最新天文学の研究対象としては、たいへんホットな星ということになりますね。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。