集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第76夜「アケルナルが見たい!」(2012年12月7日号)



 日本では、ようやく冬らしい季節になってきました。東京では毎日木枯らしが吹くかな? と思うような空模様です。夜空を見上げると、今晩こそは天の川が、東から天頂やや北寄りを通って西に流れているのが見えるかなと期待を持たせてくれます。なにしろ7日は下弦なので、宵空に月明かりが無いからですね。今年は、東京で夜空から天の川が消滅して見事に40周年なのです。

 皆さんお住まいのあたりでは、天の川が見えますか? 見えなかったら、せめて想像の目で御覧ください。冬の○とか冬の六角、あるいは多少ロマンチックに冬のダイヤモンドと呼ばれる1等星群のアルデバラン、カペラ、ポルックス、プロキオン、シリウス、リゲルの中を、それは流れています。

 木星は、いま天の川の西岸をうろうろしています。やがて東行きの旅を始め、来年4月から6月にかけて、エイヤッと横断しますが、ちょうどその頃我らの太陽も続き、途中で木星を追い越しますので、木星も天の川もその期間見ることは不可能です。

 天の川は、日本でも夜空のきれいなところに行けば、思う存分鑑賞することが可能です。ですが、皆さんは、エリダヌス座の青白いアケルナルという1等星を御覧になったことはありますか? アケルナルは川の果てという意味の名前ですが、東京では、果ての向こう側になります。つまり、南の水平線の彼方で、見ることができないのです。

 東北中部以南でごくたまに見ることができるりゅうこつ座の1等星カノープス(南極老人星)は、1度見ると10年長生きできると言われるお目出度い長寿星ですが、アケルナルは絶対に、東京(小笠原諸島を除く)では見えません。ただし、緯度が低い九州南部では今頃21時頃、水平線上に見えます。

 なので、元気な方はすばる望遠鏡があるハワイ島に行きましょう。でも、もともと元気な方は行く必要がないか!

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。