集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第79夜「天界の王者」(2012年12月28日号)



 暮れも押し迫り、町中は先生たちが忙しく走り回っています。皆さん方はいかがお過ごしですか。ひととき、世事を忘れて天界に遊んでみませんか。

 といっても、今週は遊びにくいですね。28日に満月になり、月明かりが大いに邪魔ですから。こんな時は、暗い星を見るのを諦めて、一等星と明るい惑星の振る舞いに注目しましょう。

 といっても、今は惑星界の女王金星も、それに火星も土星もみんな明け方の空にまわっているので、見るには早起きしなくてはなりません。唯一、木星だけが宵空にがんばっています。

 英語でジュピター、ギリシャ神話で全ての王と言われ、まさしく堂々と落ち着いた輝きを放つ木星。それが、星座の王オリオンの右上に陣取っています。オリオンは、ギリシャでは狩人に見立てられ、星図絵では勇ましく棍棒を振り上げた姿で描かれていますが、私は月に一度か二度、カーブして飛んでくる月をだいたい空振りする情けないホームラン王に見ています。でも、見事に打ち返したら、大変なことになりますね。

 今なら木星が勝負球です。月に較べて速度が遅い木星は、ちょうど打ちごろです。というより、既にオリオンは木星を西の方へ打ち返しています。通常の動き、すなわち西から東への順行から逆行へと変わっていますから。ただホームランとは行かないようで、1月に入ると、再び日から東への順行に戻ります。ちょっとチップした程度だったでしょうか。

 そんな木星を小型の望遠鏡で見ると、時折一重になることがある二重線と、赤くて巨大な斑点を持つガス惑星の姿が見えてきます。わずか10時間弱でクルクル自転しているので、こちらも空振りばっかりのホームラン王といったところでしょうか。でもさすが王者の風格は、こども(衛星)の数。2012年現在65個で土星と並び、それぞれ太陽系全部の衛星の38%を占めています。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。