集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第83夜「戻ってきました織姫星」(2013年1月25日号)



 夜の空には、たくさんの冬の輝星が色と明るさを競い合っていますが、明け方の空では、夏の大三角を作る輝星たちが上ってきました。どれもが白っぽいですが、中でもトップスターは、真夏のダイヤモンドと呼ばれる織姫星でしょう。なにしろ見る時刻を問わなければ、はくちょう座のデネブと共に、日本で一年中見ることができる1等星です。

 ところでこんな真冬に、真夏の星のお話をするのは気が引けるのですが、実は昨年7月に太陽系にそっくりな系外惑星系が、織姫星がある「こと座」に見つかったのです。ただし、地球から1万光年も彼方にあって、しかも太陽と同じくらいの明るさと質量なので、暗くて目で見ることはできません。

 ですが、このケプラー30と言う名前の系外惑星系は、主星が太陽とよく似ているばかりでなく、太陽系の太陽同様その自転方向と惑星の公転方向とが一致していることが判ったのです。

 直接その恒星の表面を見ることができないのに、自転方向と公転方向の一致がなぜ判ったかというと、研究した人たちは、その表面にあると思われる黒点の移動方向が、その明るさの変化から、公転方向と一致していることで知り得たのでした。

 ところで、私たちの太陽系では、今では惑星から格下げされた冥王星(後に捉えられた外来の惑星だと言う説があります)を除いて、ほぼ同一平面を公転しています。一方、特にホットジュピターと呼ばれる巨大惑星系(これは発見されやすく、数多くの実例があります)では、惑星がガチャガチャ動いて一部の惑星はパチンコ玉のように、はじき飛ばされたものもあるようです。その点、太陽系と似ている惑星系は、軌道が安定しているようです。逆に考えると、このような太陽系だからこそ、安定して生命が誕生し進化していくことができるのだと思われます。

  もしもそうだとしたら、私たちはホントに幸運だったのですね。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。