集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第6夜「伝統的七夕」(2011年8月5日号)



 21時頃、ほとんど真上(天頂)の方向に白く織り姫星(ベガ)が輝いています。地面に寝転がらないと苦しくなるほどの高さです。時間の流れと共に、東京では天頂より少し北側を通って、西空に移っていきますが、七夕行事で有名な仙台では完璧に天頂付近を通過します。仙台をはじめ、東北地方各地で行われる七夕には、そんな背景があったのですね。

 彦星(アルタイル)は仙台でもかなり南を通過します。仙台を本拠地とするプロサッカーチームのベガルタ仙台の名前は、ベガとアルタイルから創られたものです。

 今年の七夕(旧暦七月七日:国立天文台ではこの日のことを伝統的七夕と呼びます)は、8月6日です。

 ところでみなさんは、七夕を夏の行事だと思っておられませんか。実は(例えば俳句の季語など)秋の行事にされています。昔の日本では、秋が立秋(今年はから始まるとされたからです。

 今年の場合はその二日前ですが、普通は立秋後になるからで、例えば来年は8月24日、再来年は8月13日、2014年こそ8月2日で再び立秋前になりますが、15年8月20日、16年8月9日、17年8月28日、18年8月17日と立秋後になります。だから秋の行事なのです。

 お月見(今年は9月12日)も七夕同様秋の行事で、立秋と立冬の前の日までの真ん中の秋分近くに行われる約束なので、中秋の名月なのです。そんなこともあって、東から北東の空には秋の大四角(ペガススの台形)をはじめ、夜更けてケフェウス座・カシオペヤ座・アンドロメダ座などが顔を出してきます。

 反対に夏の有名星座のてんびん座やさそり座は、そろそろ南西の空に低くなり始めています。ただし、今の頃から晩秋にかけて、夜の訪れが少しずつ早くなるので、なんだかいつまでもベガ・アルタイル・はくちょう座のデネブは宵空にがんばり続けます。

※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。