集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第5夜「アンタレスがありますか?」(2011年7月29日号)



 今週末は月末でもありますが、夏休みはいよいよ本番。しかも31日が新月でもあるので、月はもちろん見えませんが、星はたくさん見えます。そして、天の川もみなさんのお住まい近くでは見えるかも。私が住んでいる東京では、もう40年近く見えません。なので、七夕の話が子供たちにはさっぱりです。

 その織り姫星(こと座のベガ)は大変明るい星ですが、今の季節(日没40~50分後)一番星になるかどうか。実は余り有名ではないけれど、もう少し明るい星が毎年夕方、織り姫星と一緒に見ることができます。

 残念ながら彦星(わし座のアルタイル)ではありません。実は彦星は、織り姫星(0.0等)より遙かに暗い0.8等なので、織り姫星が夕方の空に見えてきても、まだ数分の間見ることができません。

 織り姫星より早く見えてくる可能性がやや高いのは、といっても1~2分の差ですが、うしかい座のアルクトウルス(-0.1等)です。日本では麦星とも呼ばれています。夕方織り姫星は、頭の真上より東に見えますが、この星は西にあります。

 “やや”と申し上げたわけは、織り姫星が白いのに対して橙色だからです。空の夕焼けが濃い場合は、橙色の星が見えにくいのです。逆に空が白っぽい場合は、白い星が見えにくことになります。♯一番星見つけた!と歌っている時、果たしてどっちの星が見えているでしょう?空の状況調査ができますね。

 今年の場合(金星や木星が夕方見えないので)、三番星は土星(0.7等)ですが、その次の彦星は、もしかすると南空にいるさそり座のアンタレス(1.1等)に抜かれるかも知れません。この星は不規則に明るさを変える変光星なのです。おまけに赤色超巨星といって、太陽の数百倍に膨れあがった年寄りの星で、もうすぐ(百万年くらいの間に)爆発して死ぬかも知れません。そうなれば満月以上の明るさになり、まちがいなく一番星です。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。