集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第100夜「100回目を迎えました」(2013年5月24日号)



 みなさんからのご声援のおかげで、100回目を迎えることができました。ありがとうございます。星のお話という、政治とか経済とか法律とか、あるいはスポーツとかとは全く違う、でも「心」にはもの凄く役に立つ(はずの)分野でお役に立てれば私には本望です。

 思えば20世紀最大の出来事と言えば、私はアポロ11号の月面着陸だと思います。私は、1969年7月21日のあの晩、引率していた尾瀬の林間学校で、中学2年生の子供たちと月を見て「今あそこに人が歩いているんだぞ!」と叫んでいました。あのときは、まだ20世紀が終わっていませんでしたから、それが20世紀最大のことになるとは思っていませんでした。しかし、21世紀になって、いろいろな意味で歴史上それ以上のことはなかったことに気づきました。

 2週間前の今月11日、あの日から16000日が経過しました。この期間様々なことがありましたが、あの月面着陸以上に未来への希望にあふれたことがあったでしょうか。

 天文は絶対に悲しみを創りません。反対に希望を創ります。こんな小さな頭でこんな大きな宇宙のことを考えること自体、凄いことだと思いませんか。そして今や宇宙の未来のことや、太陽系外生命のことなどを、幾らかでも実体として考えることができることって、とっても素晴らしいことだと、私は主張します。

 50億年から70億年後までに、太陽が膨張し、数回周囲にガスを吹き出し、惑星状星雲というものを形成させた後、縮んで冷えていくにしても、あるいはその前に地球が太陽に呑み込まれ、消滅するにしても、また、遠い将来には、宇宙が冷えて、すべてが凍り、動かなくなるにしても、それはそれで(そういうことを科学の心で見ると)とても楽しいですよ。

 25日は満月です。16014日前にそこを歩いた人がいたことを、その月を御覧になりながら、考えてみるのはいかがですか。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。