集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第101夜「梅雨空の彼方の銀河中心」(2013年5月31日号)



 冬を代表する星座のチャンピオン、言うまでもなくオリオン座は、毎年3月には夕方見えなくなり、5か月後の8月の明け方東空に姿を現すまで、長い長い夏休みに入ります。今がその真っ最中、なので今は夏を代表する星座のさそり座が天下を取っています。

 ですが、南の空低くをあっという間に(という程ではありませんが・・・)通り過ぎるだけなのでさほど目立たず、日本語で「魚釣り星」とか「鯛釣り星」などと表現されたS字形の星の並びをまじまじと認めるチャンスは、さほどありません。その東に続いて登場する南斗六星に至っては、オリオン座と同じくらい有名な北天の北斗七星と良く似た柄杓形をしていますが、ずっと小柄で、しかも関東地方でせいぜい28度程度の低空を通過してしまいます。東北地方ではさらに3~4度低く、北海道では地平高度が20度にも満たなくなります。このため日本では、さそり座よりずっと無名です。

 でも、その南斗六星があるいて座には、とても重要なものがあります。それは銀河中心です。つまり、私たちの銀河系(最近は天の川宇宙と呼ばれるようになりました)の中心です。だから星々がひじょうに密集して、白くてミルクのように見え、そのため英語でミルキーウェイと呼ばれるようになった「天の川」が、とても濃く見えるところです。

 天文写真家のみなさんの傑作を見せてもらうと、中に必ずいて座が写る天の川フィールドの写真があります。天の川が写っているはずのオリオン座の写真で、これこそ天の川だ!と言えるような銀河の映像にはあまり出会えません。これは、一番天の川が濃い銀河中心とは180度反対側だからです。つまり私たちが住んでいる太陽系は、いて座方向にある銀河中心から見ると、オリオン座方向に位置するということになるのですね。

 夜半まで(特に6月9日の新月前後には)、はるか2万5000~2万6000光年彼方の銀河中心方向の眺めを堪能するチャンスです。とはいえ、何とも梅雨がうらめしいですね。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。