集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第115夜「天界のデート」(2013年9月6日号)



 金と真珠はどちらも私には高嶺の花ですが、夜空のそれ、もちろん金星と真珠星=おとめ座の白い1等星スピカを観賞するのはタダです。ただし、今見える時間はちょっとしかありません。日没後遅くとも1時間以内に西南西のチョー低空に、くっつくように見えているはずです。最接近は6日で、その後は日ごとに金星が東に離れていきます。本当にチョー低空ですから、そちらの方角の見晴らしがよく、かつ晴れていなければなりません。見られたらチョー幸福ですね。

 その後17日の晩に、金星は土星とデートします。華やかに輝く金星に対して、落ち着いた色合いの土星は派手ではありませんが、このデートも見物です。

 9日の夕方には、月がまるで二人を邪魔するように間に侵入しますが、それは一晩だけのこと。翌日には、月はさっさと東に行ってしまいます。浮気性なのか、月は12日夕方にさそり座の赤い1等星アンタレスとデートします。でもやっぱり浮気性は変わらず、翌日にやはり月は遙か東に行ってしまいます。

 人間は、自分がそうであるためか、どうしても天体に自らの性格や振る舞いを当てはめがちですが、もちろん天体はそんなことはお構いなしに運動し、輝いています。たまたま地球から見ていて、何らかの意味があるように見えるだけのこと。

 そんなことに惑わされず、じっと腰を据えて、それらを観察していると、その運動がニュートン力学で計算できることや、もし望遠鏡を利用できれば、金星が今、半月状に見えることや、土星の環が今とても開いて見える(環を斜め上から見下ろすようになっている)ことがわかるなど、科学することが出来ますよ。あの有名なガリレオさんがしたように……。

 ガリレオは望遠鏡の発明者ではありませんが、望遠鏡を天界に向けた第一号の人です。それによって、天の川が星の集合体であることも発見しました。月明かりが邪魔しない今週は、天の川観望の絶好のチャンスですね。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。