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あつぼし見上げて夜話

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第181夜「下弦の月」(2014年12月12日号)



 今月14日の月は下弦です。この夜ふたご座流星群が極大になりますが、真夜中から明け方にこの月が邪魔します。ところでどうして下弦と言うのですかと、筆者がカルチャーセンターでお話している受講生の方からよく質問されます。反対に、逆にどうして上弦というのでしょうと、質問させていただくと、やっぱり判りませんとお答えを戴きます。

 そこで、そもそも弦というのは、月を弓に見立てたとき、欠けている側を弓の弦に見て、月が西の空に沈む際に弦を上にして沈むときが上弦、下にして沈むときが下弦ですとお答えすると、大体変わっていただけます。ただし、上弦は暗い真夜中近くに沈むので良く見えますが、下弦は明るい日中に沈むので印象が強くありません。なので、それをご覧になった方はごく少ないようです。

 ですが、もう一つの説があります。それは旧暦を使っていた昔の人にはすぐに判ります。旧暦では新月(朔)が必ず一日、満月(望)が大体十五日ですから、上旬にある半月が上弦で、下旬にある半月が下弦だというものです。ただこれはあくまで旧暦での場合で、新暦では通用しません。

 どちらが正解かは判りませんが、見え方からの説の方が受講生の方には好評なようです。

 日本からフランスに飛ぶと、かの国では上弦をプルミエール(最初の半月)と呼んでPを略号とし、下弦をデルニエール(次の半月)と呼んでDで表すそうです。勿論三日月はクロワッサンでC、新月三日前頃の逆さ三日月はデクロワッサンでこれもDと書くそうです。二つのDをどのように区別するのでしょうか。

 英語では上弦をファースト・コーター(最初の1/4)、下弦をラスト・コーター(最後の1/4)と言います。いずれにしても日本語の方が風流に思います。

 次回の上弦は今月29日ですが、正確に上弦になるのが午前3時半頃なので、前日夕方でも当日夕方でもほぼ半月が見えるはずです。私はというと、上弦下弦共に「蒲鉾月」と呼んでいます。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。