集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第211夜「太陽系はどこで生まれたか」(2015年7月10日号)



 今日は夕方月が無く、おひつじ座にある下弦過ぎの月が夜半すぎに上って来ます。なので、梅雨空でなく晴れ上がった暗い空なら、もちろん天の川が見えるでしょう。

 木星と金星は共に春の星座のしし座内にいて、宵空にチョコッとだけ顔を出しています。夏の星座てんびん座には土星がいて夜半すぎまで頑張っています。水星と火星は太陽と共にふたご座に同居しているので、見えません。

 さて、最近の天文学の発展は、私のようなロートルは目を見張るばかりです。だってそうでしょう。今から60年以上前には、ブラックホールなんて夢のまた夢でしたから。今では、我が銀河系(なんて申し上げるとやっぱりロートルですね、今の若い人たちは必ず天の川銀河と言いますから)の中心には、ブラックホールが鎮座していることが明確になっています。

 また、208夜と209夜でお話しました通り、銀河系がラニアケア超銀河団内にあることも明らかになってきました。また、太陽系の位置は、銀河系中心から約3万光年、その中心面から15光年にあり、銀河系中心の周りを秒速234kmで公転していることも判ってきました。

 そればかりではなく、今では①高齢の隕石中から見つかった放射性元素から、初期の太陽は孤立していず、兄弟星がたくさんいた、②現在の太陽系の位置ではそんなに無い重元素の量が、実際には多いことから、近所でかつて超新星爆発があり、ばらまかれた重元素が太陽系に補充された、③以前太陽系近傍を通過した名も知れぬ恒星が、天王星と海王星の外層を剥ぎ取ったらしい……ことなどが判ってきました。多分、太陽の回転進行方向か逆方向に数十から数百の兄弟星があると考えられていますが、まだ見つかるには至っていません。

 いつの日にか、太陽系がどこで生まれ、誰が兄弟かが判るときが来るに違いありません。太陽系もたくさんの星たちとつながっているのですね。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。