集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第232夜「アルゴル・キャンペーン」(2015年12月4日号)



 先週は「ユニバーサルとグローバル」と題してお話したので、今週は「アルゴル」にしました。と申し上げても前者は英単語の基本語ですが、アルゴル(妖怪)はよほどの辞書でない限り載っていません。完璧な天文用語・星名です。別名ペルセウス座β、と申し上げても知る人ぞ知るで、知らない人は知らない。

  実は、世界各地でオーグル(人喰い鬼)、デーモン(悪霊)、ゴースト(幽霊)、ゴウル(墓を暴く鬼)、デビルズヘッド(悪魔の頭)、ロシュ=ハ=サダン(ヘブル語で悪魔の星)、中国語で屍堆星などと呼ばれ、サンザンです。

 そのせいか、私もちょうど50年前の12月にこの星に取り憑かれました。爾来420回を超える極小観測を繰り返してしまいました。何とか77(ラッキーセブンだとかの意味はなく偶然です)歳までに500回を超えようと、夜だけ頑張っています。

 12月7日午前2時頃、9日23時頃、12日19時半頃を狙っています。普段は肉眼で楽に見える2等台で輝いていますが、この予報時頃には3等半と暗くなり、双眼鏡で見るのが好ましくなります。

 私が同星の観測を続けているのは、突然その変光周期が秒単位で変化するからです。ただし、すぐにそれが結論づけられるわけではなく、半年ほど経たないと明らかな周期の増減は判りません。普段の極小時ほど暗くならないとか、色が赤っぽくなったとか、種々な異常は判りますが・・・。

 やっぱり、昔の人の言うとおりです。あなたもきっと取り憑かれますよ。それが長生きの切っ掛けになればOKですね。

 ともかく、天体観測は生きていなければできません。例えば関東で皆既日食を見ようと思ったら、2035年9月2日まで生存していなければ、それは夢の世界のことになってしまいます。また、ハレー彗星を見ようと思ったら、2061年7月末までですね。ともかく、何が何でも頑張りましょう。ダメだったら、遺書に「必ず見てね」と書いておきましょう。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。