集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第32夜「ベテルギウスがありますか?」(2012年2月3日号)



 8日が満月ですから、3日は満月前ですが明るい月が頭上から照らしつけます。与謝蕪村の有名な句で私も大変好きなものが「月天心 貧しき町を 通りけり」です。冬の月をよく謳っていると思います。天心とは天頂のことでしょう。どちらも美しい言葉ですね。同様に天辺(てっぺん)もあります。

 ところで、天を「あま」とも読みます。天照大神の「あま」です。おもしろい説(そして「まじめな説」です)に、天頂を向いて何か言おうとすると、「あ」とか「ま」とか、ともかくア行の発音しかできないから、「あま」なのだというのです。みなさんも真上を向いて、あ・い・う・え・おと試してみてください。苦しくて言えない音がありますね。天国の神様にアヴァ!と呼びかけたり、パパ・ママの起源もそれに通じると言います。なるほどですね。

 そんな明るい月明かりでも、オリオン座の赤色超巨星ベテルギウスは見えています。ですが、今晩ベテルギウスがあることを、みなさんは当たり前だ!と思われますか?

 実はベテルギウスは年寄り星で、学者によっては、あと寿命1000年とも言います。私は少し控えめにあと1万年と言っていますが、もしかすると今晩か明晩かも知れません。ともかく不安定な状況に入りつつあることは間違いなく、太陽の十数倍重いことから、間違いなく超新星爆発を起こして死にます。

 そしたら、必ず一時的に満月よりやや暗い(-10等半)程度に輝くはずです。昼間でも見えるでしょう。ただし、いつまでもその状態を続けるわけではなく、1年くらいで見えなくなる可能性があります。爆発後1万年くらいは、周囲に超新星残骸というカスを残すはずです。

 地球から見える1等星の中で、近々超新星爆発を起こす可能性のトップバッターがこのベテルギウスで、2番手が夏空に輝くアンタレスです。今晩、赤いベテルギウスが星空にあるかないか、ぜひご確認を!

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。