集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第37夜「未来に希望を!」(2012年3月9日号)



 ちょっと悲しい唄ですが、私は坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」が好きです。にじんだ星を数えてとか、幸せは雲の上に・幸せは空の上にとか、悲しみは星の影に・悲しみは月の影にとか、下を向いて地面ばかり見ていては、別れという人生最大の悲しみを決して乗り越えることができないと思うからです。下を向き涙を落としてばかりはいけません。

 あれから1年の3月中旬、星空では誰もが望遠鏡なしに見ることができる、大きなイベントが起こります。それが、金星と木星の超接近です。さらに4月には金星がすばるの南すれすれを通過するという、これも見逃せない現象が起こります。過去を恨まず、未来に起こることを皆さんで楽しみませんか。

 9日の日没直後、例えば18時頃、西空の高度40度くらいに一番星の金星が見えています。10分くらいたつと、その斜め左上に二番星の木星が見え始めます。角距離約5度とずいぶんと近いですね。でも日ごとにさらに接近し、12日には3度17分、13日3度2分、14日3度1分、15日3度15分となります。13日と14日のちょうど中間、日本では朝方になり見ることができませんが、3度0分で最接近です。

 それにしても、太陽・月に次いで明るい天体どうしの超接近です。UFO出現と大騒ぎする人もいるかもしれません。その後は、金星と木星はしだいに離れていきますが、3月26日には約11度離れた二つの星の間に、一晩だけ弓張り月(4日月)が割り込みます。翌晩は月が金星よりさらに左(東)に離れていきますが、その金星が4月3日に、有名な散開星団すばる(プレアデス星団)の南をかすめる(中心からたった0度半!)のは圧巻です。当日19時頃に薄明の残る西空を眺めて、(できれば双眼鏡を使って)その美しい眺めを楽しんでください。忘れられない天体現象になるはずです。

 そして、金星は4月半ばから5月初めにさらに明るくなり、日没前の青空に輝くようすが肉眼で見えるかもしれません。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。