集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第51夜「いよいよ夏」(2012年6月15日号)



 来週水曜21日は夏至です。日本の古くからの季節区分では、今年5月5日の立夏から8月7日の立秋の前日、すなわち6日までが夏になっていましたが、最近の季節感覚では梅雨明けから8月末(年によっては猛暑が9月初めまで続くことも)が夏ですね。

 でも、皆さんは学校で夏が6・7・8月と習いませんでした? 実はその季節区分は進駐軍がもたらしたアメリカ式なのです。ヨーロッパではまた違い、教科書的には夏至から秋分の前日までです。ただし、実際の肌で季節感覚は、南欧・中欧・北欧(夏がごく短期間)によって違うそうです。

 四季の星座分類も日本と欧米の方式とは微妙に異なっており、たとえばおとめ座は日本では春の星座ですが、欧米では夏の星座に、はくちょう座は日本では夏の星座ですが、欧米では秋の星座とされています。季節だけでなく、緯度の差による見え方の違いも関係しているようです。

 そんな季節でもし梅雨が中休みしてくれたら、世界中どこでも夏の星座とされる(北半球高緯度は昇って来ないので除く)さそり座を楽しみませんか。そう、11か月前の第4夜でご紹介したあれです。季節は巡りました。

 日没が遅いので、夜の訪れも遅くなって、20時半を過ぎても天の川は見えてきません。今週から来週にかけては月明かりがありませんから、灯火のない場所でグイっと天の川を引っ張る釣り針を鑑賞しましょう。北西空に見える北斗七星を舟の舵、夜更けて北東の空に上るカシオペヤ座のW形を錨に見たのは、みんな日本の漁師さん達です。

 漁師さんたちは、星を見て方角や時刻を知り、あるいはこれからの天候を知って漁に出かけました。だから天文博士です。星のことをよく知っておられます。日本が改めて海洋国家であることを教えてくれるのです。

 星のことを知って宇宙の謎を考え、未来のことに思いをはせるのはいかがですか。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。