集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第54夜「一年経ちました」(2012年7月6日号)



 昨年7月7日から参加させていただいたこの活動も、いよいよ今回で一年が経過いたします。被災地に住んでおられた知り合いの天文関係者や、他の地域に住む支援者の皆さんから、これまでに「読んでいるよ」という暖かい言葉を多数戴きました。参加させていただいて本当に良かったと、つくづく感じ入っています。

 星が取り持ってくれているわけではないでしょうが、星のことでいくらかお役に立てさせていただき、私はうれしく思っています。思えば星は本当に数え切れないほどあります。人類がまだ全く知らない、出会えていない天体も無数にあるに違いありません。それを一つ一つ発見していくことは、ほとんど永遠に続く科学の道でしょう。

 私は、現在ごくわずかの星、アルゴルとアルマーズと、ミラの明るいときしか観測していませんが、アルマーズ(ぎょしゃ座イプシロン)と4年前からお付き合いを始めたために、位置的・時期的に太陽が近くて見ることができない5月中半から7月中半までの丸2か月を除く300日有余毎晩観測しています。

 その際、カシオペヤ・ペルセウス・おうし・オリオンあたりは、いつも新星の出現をチェックしています。いて・さそり・わし・はくちょうなど銀河中心に近く、新星出現の可能性が高い区域とは逆方向のため、未だに新星発見の経験はありませんが、このあたりで口径5cm双眼鏡を使って見ることができる星の並びは、頭の中にほとんど入っています。

 もしも新星出現を見逃したら、きっと恐ろしい精神状態になるに違いありません。でも、星を見ているときは、何もかも無で平穏な精神状態になっている自分に時々気づくことがあります。それを私は「幸せ」と感じます。みなさんがそれを感じていただけるように、これからも、星の楽しみ方を少しでもお伝えしていければと、願っています。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。