集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第55夜「15日朝と16日朝は早起きしよう」(2012年7月13日号)



 今から半世紀前まで、天文学者の日付は正午で変わっていました。また、私が今から45年近く前の学生時代には夜中の1時は25時、明け方6時が30時でした。いずれも、夜の観測中に日付を変えて観測野帳に書き付けるのが面倒であり、場合によっては間違いのもとになることを避けたためです。

 だから、昔なら今回のタイトルを「14日と15日は早起きしよう」で昔は済んでいました。それで15日朝・16日朝と「朝」を繰り返さなくて良かったからです。でも、今ではそうはいきませんね。

 閑話休題。15日午前3時頃(しつこいようですが14日27時でもある)、東やや北よりの高度10~20度付近には、UFOではありません、月と金星、その下に木星がごちゃっと固まっているのが、晴れているなら見えるはずです。金星と木星の間やや南寄りにおうし座の赤い1等星アルデバランもいるはずです。

 時間の経過と共にそれらはゆっくり高くなって息ますが、空も黒からうす青、そして青と変わっていき、ついには日の出と共に明るい青空に交代します。木星はどんなにがんばっても日の出15分過ぎくらいに見えなくなります。でも月と金星は、しばらくの間見えているはずです。

 これが翌日の同時刻には、金星・アルデバラン・木星の並びはほとんど変わりありませんが、月だけ木星の下に来ているはずです。もちろん月が移動したのです。ただ、前日よりもずっと細い月(26夜月)になっているので、薄雲が出ていたりすると、見えないかも知れません。

 お年寄りはご存じでしょうが、二十六夜講とか二十六夜待と言って、こういう細い月を拝むために寝ずに月出を待つという風習が日本にありました。弓や糸のように細い月は、感動的ですらあります。月が動いているのだなどというのは野暮かも知れませんね。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。