第103夜「銀河系の構造が分かる?」(2013年6月14日号)
いよいよ、星好きにとっては辛い梅雨の季節。とはいえ、今年はここまで空梅雨の様相なので、15日が上弦の月ですから、まだまだ月明かりのジャマがないこの週末、うまく晴天に恵まれる地方であれば、ゆっくり星を楽しめそうです。
そこで、少しの時間でも夜空が晴れたら、薄雲越しでも見上げてみましょう。宵空なら西北西の低空ですが金星が、そして西空には欠けた月が見えています。その頃北斗七星(おおぐま座)が頭の真上より北西側に、傾きかけています。柄杓の柄からカーブを南に伸ばすと、特徴的なオレンジ色の1等星、そのため日本で「麦星」と呼ばれているアルクトウルス(うしかい座のα星)があり、よく目立っています。
そのカーブをさらに南に伸ばすと、日本で真珠星と呼ばれる、これも特徴的な白い1等星スピカ(おとめ座のα星)が、控えめに輝いています。両方の星は、日本で夫婦星とも呼ばれ、もちろん日焼け色のアルクトウルスが旦那様、控えめなスピカが奥様でしょうね。
西空にある白っぽい1等星、と言っても1等星としてはもっとも暗いほうで、ほとんど2等星のように見えるレグルスが輝く「しし座」と、「うしかい座」に挟まれたほとんど星がない領域に「かみのけ座」があります。たいへん目立たない星座ですが、じつはここには重要なものがあります。「銀河北極」です。
北極と言っても寒いわけではありません。銀河系は地球同様自転しています。その自転軸の北方向と考えればOKです。コマなら軸の真ん中(銀河中心)は、90度離れたいて座方向にあります。
さらに90度、つまり銀河北極から180度離れた方向が、もう一つの極すなわち「銀河南極」です。今頃なら明け方の南東方向に見えてくる「ちょうこくしつ座」にあります。つまり、今頃の空では一晩で銀河系の構造が分かってしまうわけです。ということで、今回注目していただきたいことは、銀河中心にあるいて座Aスターというたいへん特徴的な天体のことです。はたしてその正体は…? 次回にそのことをお伝えしたいと思います。
※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。