集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第104夜「いて座Aスター(続編)」(2013年6月21日号)



 前回お話ししたいて座Aスターは、ブラックホールですから、スターではありません。天文学者がそれにいて座A*と記したからです。*は、辞書ではアステリスクとあり、アステが星を意味するので星印と呼ばれます。だから天文学者はそれをいて座Aスターと呼んでいるのです。ブラックホールのいて座A*がある場所は、電波源いて座Aの中心です。

 実は銀河系(最近は天の川銀河と呼ぶ天文学者が多い)ばかりでなく、多くの銀河の中心にブラックホールがあることが分かっています。最大級の超巨大ブラックホールは、地球から6000万光年の距離にあって、おとめ座銀河団の中心銀河の巨大活動銀河M87の中心核を形成するもので、太陽質量が10億個分ほど集まったブラックホールです。

 それに比べ、いて座Aスターは、わずか400万太陽質量の小型のものです。でも、ブラックホールですから見ることができないのに、どうして質量が分かるのでしょうか。

 それは、たとえば、ハッブル宇宙望遠鏡のように宇宙空間を飛び回り、一日中そして一年中宇宙を見つめ、空気がない場所で極めて高解像度の映像を取得する、といった観測の積み重ねによって、いて座Aの近所に見える星の運動から、重力の影響を調べることができ、さらにその重力の元になっている質量を知ることができるというわけです。最近は、本当に様々なことが分かるもので、すごいですね。

 小型と言っても、いて座A周囲を蔽うガスのサイズが地球の公転軌道のスケールほどもあるので、中心にあるブラックホールの大きさはなんと水星軌道ほどもあるそうです。超巨大ブラックホールとは言われていますが、その中では軽量級ですね。姿が見えないため、残念ながら大きさは不明ですが、推定直径が2500万kmです。

 すると、その密度は1立方cmあたり1000グラムしかなく、この値は、意外と低密度で、太陽中心密度のたった6~7倍です。宇宙で最も高密度な星は中性子星で、1立方cmあたり、なんと3億4000万トンにもなるそうです。

 宇宙の面白さ、凄さをご堪能ください。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。