第106夜「あかいめだまのさそり」(2013年7月5日号)
月が変わって7月に入りましたが、相変わらず梅雨空が続きます。それどころではなく、梅雨も最後の激しさを増している今日この頃。
でも、もし今晩晴れるようなことになったら、ぜひ21時頃南の空を御覧ください。そこにさそり座が昇っているはずです。日本列島にはサソリが棲息していないので、目玉の色が赤かどうかはよくわかりませんが、有名な宮沢賢治さんは、作詞作曲した「星めぐりの歌」で、あかいめだまのさそり、と歌い上げました。
もちろんさそり座の頭部にある1等星アンタレスが赤いからですね。そんな状況をみなさんは眺めることができるはずです。ただ、これから2週間ほどは夕方に月が邪魔をして、アンタレスの色が見えにくい状況が続きます。
今月末には状況は改善しますが、8月にはいると薄明終了時には南西空に見えるようになり、低くなっていきます。なので、さそり座をゆっくりと心ゆくまで楽しむのは、日本では少々無理があります。
オリオン座が、毎年8月の未明から翌年3月の宵空まで楽しむことができるのに対し、さそり座は、夕方見える絶好のチャンスの時期を梅雨空が遮るのです。なので、最近「超新星爆発するのでは?」と大騒ぎされているベテルギウスは、日本でも良く観測されていますが、アンタレスについては、ほとんどまともに明るさの変化が調べられていません。
みなさん、少しでもチャンスがあったら、アンタレスを、そのすぐ西にある青白い2等星のさそり座デルタ星と比べてみませんか。もし、アンタレスが青白くその星より暗くなっていたら大変です。超巨星は爆発直前縮むため青白く暗くなるので、数日後に超新星爆発することになるかも、だからです。・・・こんなお話すると、偉い天文学者から「騒ぎをけしかけている」とお叱りを受けるかも知れませんが、私は後代の人にデータを残すことが何よりも大切です、と申し上げようと思います。
※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。