集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第52夜「首飾り星」(2012年6月22日号)



 毎月あることですが、今週末夕方の西空にしばらくの間欠けた月が見えるようになりました。日ごとに太っていき、27日には上弦、そして来月4日にはついに満月になります。でも、梅雨の後半になるので、雨降りお月様になるかも知れません。もしかして、雷神様もご活躍かも知れないですね。

 そんな折り、その雷神様が乗っていた雲がパァッと消え去った一瞬の間、頭上高くに開いた円い穴から、まるでネックレスのような星の連なりが姿を見せることがあります。残念ながら、それはネックレス座でも首飾り座でもなく、クラウン、すなわちかんむり座です。

 外国語での星座名では、北の冠と言います。南方の星座に南の冠があるからで、どちらもおもだった星の並びは王冠型の半円形ですが、北の冠の方が正面にダイヤモンドのように輝く白い2等星を持ち、冠のイメージにぴったりです。その星の名前は数種ありますが、ゲンマ(英語のジェム)すなわち「宝石」が有名です。

 日本では、先ほどお話した雷神様に関わるものを忘れることはできません。実は、その半円形の星の並びが、雷神様が忘れていった太鼓に見えるので「タイコボシ」の名前が知られています。

 ほんの半トキ前までピカピカドンドンやっていた雨空が急に晴れ上がり、空の真ん中に取り残された太鼓の行き場がないように見えることがあり、まさしくタイコボシです。梅雨や雷がぴったりの今の季節の日本に、これまたぴったりの星の連なりですね。

 一部が欠けたお皿形にも見えるので、インドでは「欠けたお皿」と呼ばれています。見方に地方色とか国民性が見えて、星の連なりを調べるのはとてもおもしろいですよ。

 でも私には、半円形の中にいつも気になっている星があります。かんむり座Rと言う星で、体の中からガスを吹き出し、まるで忍者のように暗く見えなくなってしまう星です。梅雨の季節で観測できないことが多いのが残念です。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。