集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第49夜「部分月食と金星日面経過」(2012年6月1日号)



 来週は忙しいですよ。4日に部分月食、6日に金星日面経過があるからです。ただし、金星日面経過は、太陽の手前を金星が横切っていくのを「見る」わけですから、裸眼で見るのは極めて危険です。眼鏡屋さんで普通に売っているのサングラスも、そのまま使って太陽を見てはいけません。間違いなく、目玉焼きになって、取り返しがつかなくなります。

 望遠鏡を使って「見る」ときも、日食の時と同様に投影法と言って、白い板に太陽象を映して見るのが安全です。場所によって時刻が異なるので、詳細はお近くのプラネタリウムや天文台にお問い合わせいただくこととして、例えば仙台では、7時10分頃太陽の東縁に金星の西縁がかかり始め、13時47分に太陽の西縁から金星の東縁が抜けます。その間約6時間37分が日面経過時間です。

 2004年6月に起こりましたが、この次は暫く先の2117年12月11日(昼間)、2125年12月9日(夜間)、2247年6月11日(夜間)、2255年6月9日(昼間)……となります。日本で夜間起きるものはもちろん我が国では見ることができません。

 というわけで、この現象は大変珍しいものなのです。今はレーダーやレーザーなどを使って、天文学の基本となる数値の1天文単位(地球~太陽間距離:約1億5000万km)を決めることができますが、昔はこの現象を使って決定したりしたものです。

 4日の部分月食は、それほど現代天文学では観測の意味が無くなりましたが、誰もが簡単に見ることが可能ですから、みなさんでお楽しみ下さい。時間は19時から21時過ぎまでです。全部欠けませんが、月の南およそ3割半が地球の影に覆われます。私は今回の月食をふざけて「魔女の首切り月食」と名づけました。いつも満月面に見える魔女の模様の首下半分が影に覆われ、台の上に首が乗っているように見えるはずだからです。趣味悪いですか?

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。