集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第50夜「やっぱり不思議な土星の環」(2012年6月8日号)



  待ちに待っていた金環日食も先月21日に過ぎ去り、部分月食も今月4日に、6日には次回2117年という遙か未来まで待たなければならなくなった金星日面経過も終了しました。

 天文現象は時の流れと共にあります。だから、それに正面から対面しない限りは、もう後の祭りになるものです。今週は、その意味では、ようやく静かな時の流れに戻りますが、それでも10日19時41分には、太陽が春分の日に通過した春分点から80度離れ、それを天文学者は「入梅」と呼びます、21日8時9分には90度離れ、それを天文学者は「夏至」と呼びます。

 早いもので、いよいよ夏なのです。入梅と言っても、毎年この日から梅雨になるわけではありません。みなさんご存じのように、梅雨に入ったかどうかは、毎年気象庁が決めるもので、地域によっても異なります。その上、北海道には梅雨が無いとも言われます。

 梅雨が無いと、農家の皆さんにとってはお困りのことでしょうが、星を見るには梅雨があるのが困りもの。それが原因で、うしかい座・りゅう座・かんむり座・ヘルクレス座など、春の星座の知名度は今ひとつです。

 でも、今頃、宵の南空に見える土星は、知らない人はおられない著名な天体でしょう。もちろん土星は惑星ですから、太陽のまわりを公転します。だから、ある時は真冬の空に輝き、ある時は真夏に観望シーズンになることもあります。

 公転周期が約30年なので、夏によく見えるシーズンはしばらく続き、約15年経つと、冬によく見えることになります。もちろんその間は、秋によく見えることになります。これからですと、2020年以降に秋がシーズンになります。

 それにしても、土星の環は不思議ですね。大きさ27万kmに対して、厚さはせいぜい100mくらいしかないといわれています。これは、100km離れた山に上に敷いた紙一枚の厚さに相当する薄さだそうです。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。