集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第2夜「水星を見よう」(2011年7月8日号)



 夜の9時頃には北斗七星の柄杓が西空に傾き、替わって東空高くには夏の大三角が見えています。季節は星空でもやはり夏です。

 そんな中、南の空でおもしろいことが、8日の晩には、土星(土色)とおとめ座のスピカ(白色)と半月が三角形を作りますが、月の移動で翌晩には直線に並び、さらに10日夜には、月がスピカとさそり座のアンタレス(赤色)の真ん中に、11日夜にはアンタレスのすぐそばに移動します。

 星空は決していつも同じではなく、変化しています。動植物と同じく生きているのです。流星が飛んだり、人工衛星も星だとすれば、飛んでいます(ただし夜中は太陽の光を受けずほとんど見えない)。明るさを変える星もあれば、場合によっては爆発したりする。おもしろいですよ。

 そんな中、今週は日没直後の西北西の空に注目です(できれば西側が地平線や水平線まで見える所がGood)!太陽が沈んだらすぐさま準備です。なぜかというと、目当ての水星もすぐ沈んでしまうので。双眼鏡(太陽を見てはいけません)を用意して、太陽の斜め左上、地平線からの高さ15度ちょっと(腕を伸ばしてじゃんけんのパーを出して親指と小指の間の角度)をくまなく探して下さい。ポツンと黄金色に耀く点を見えたら水星かも。

 大天文学者でも見たことがない人が多いといわれる、太陽系最内側の惑星です。なにしろ、高く昇らないので、北緯35度付近では年間朝夕足して20日くらいしか観望できません。緯度が高くなればさらに条件は悪くなります。しかも動きが速いので、のんびりしているとチャンスを逃す。水星はそんな韋駄天の星です。

 だから、ギリシャでは伝令神(郵便屋さん)に見られました。3月半ば過ぎか7月上旬に太陽から東に離れるときが夕方の観望好機、9月初めか年末に太陽から西に離れるときが明け方の観望好機です。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。