集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第107夜「宵の明星は金星です」(2013年7月12日号)



 日没が少しずつ早くなってきました。一番それが遅かったのは、観測場所の緯度によって日付は少し異なりますが、おおよそ6月30日頃でした。それに比べると、もう4、5分早まったのです。たったそれだけ? と思われるかも知れませんが、一番日没が早まる12月上旬では、日本では平均153分も早まるのですから、日没の時間はずいぶんと変化するのですね。

 ところで、今年は、北日本を除いてもう梅雨が明けてしまい、たいへんな猛暑が続いています。体調にはくれぐれもご注意いただきたいところですが、星を見るにはたいへんラッキー。パッと晴れ上がった宵空には、西空(低くですが)一番星が・・・。宵の明星の金星です。約千年前の日本(つまり平安時代頃)では、宵の明星と明けの明星は別物と考えられていました。日本ばかりでなく、世界中どこでも別物説が通用していました。天文学が進んだ今では、それって信じられませんよね。

 でも、そんなこと考えたこともない、と言う方には、それって理解が難しいことも、ある意味自然なことかもしれません。なぜなら、それは夜空の中の金星の動きをかなり慎重かつ科学的に観測しなければ結論が得られないからです。どうです、皆さんも金星の位置観測をやってみませんか。かなり長期間(1年半以上、それもその期間の半分は明け方です)にわたる熱心な観測が必要になりますが・・・。

 ただし、今年の金星は、西空であまり高く昇りません。日没時の高さがおよそ18度(観測地点の緯度にもよる)のまま、10月下旬まで毎日少しずつ南方向へ移動します。11月に入って少し上昇しますが、12月上旬頃(その頃は一番明るくなるので、もしかすると、一番星どころではなく昼間の青空の中に見ることができるかも知れません)高度24度くらいから下がっていき、来年1月上旬には宵空から姿を消して、しばらく後から明けの明星になります。
 でもね、あの有名人の清少納言さんも著書『枕草子』に「夕づつ(宵の明星のこと)」が好きと書いているほどなので、ぜひ年末までの間、金星をお楽しみください。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。